イチゴのかき氷
「…千夏!」
「…わぁっ」
突然耳元で大きな声がして、あたしは驚いて声をあげた。
「またぼーっとして!」
「あ、ごめん舞桜。」
季節は流れ、春がこの町にも訪れていた。
桃色の花びらが舞うこの季節。
あたしにとって、今まで一番思い出深かった季節だ。
「今日からあたしら、二年に進級でしょ?どうすんの、そんなんで。」
「あはは、ごめん。」
「あんた最近、いつも以上にぼーっとしてる。何かあったの?」
「ううん、なんでもないの。ただ…」
「ただ?」
「ずっと待ってたから。この時期を。」
あの人が、来るのを…。
風が柔らかく吹いて、だいぶ伸びたあたしの髪と桜の花びらをなびかせていった。