イチゴのかき氷





「スローロリスは、超動きが遅い猿だよ。あたし、トロいから…。」





「ふぅん?確かに自分、トロそうやもんなぁ。ってか、スローロリスって、猿なん?リスちゃうの?最後にリスってついてるやん。」





「スローロリスの“ロリス”は、道化師って意味なんだよ。確か、オランダ語。」






「へぇ。自分、物知りなんやなぁ。ってか、そんなわかりにくいあだ名を付ける奴のがすごいわ。変わった奴やのぉ。」






…ちなみに、あたしをそう呼んだのは舞桜だ。






『ああもう、トロくさい!ナマケモノの方がまだ早い!ナマケモノは泳げんだよ!?あんた泳げる!?あんたスローロリスみたいだわ!』





レポートがなかなか終わらなくて、夜中まで付き合ってくれた舞桜はそうあたしを叱責した。







「どうせあたしは、トロイですよ…。」





ずーん、とあたしが落ち込んだのを見て、彼はふっと笑みをこぼした。






「ええやん。そういうのを、可愛いと感じる男もいるねんで?ちなみに俺も、そんな一人。」





「えっ」






彼は、その大きな手であたしの頭をぐしゃりと撫でると空っぽになったかき氷の器を持ってガバッと勢いよく立ち上がった。







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