君が笑ってくれるなら
第二章


あまりの眩しさに目が覚めた。

最初に目にはいってきたのは、紅く染まった大きな夕陽だった。
いつの間にか、身体を横にして寝ていたらしい。
我ながら、この狭いベンチの上で寝返りをうつなんて器用なことをしたな、と関心してしまった。

随分と長い時間をここで過ごしてしまったようだ。
日中よりも気温が下がったためか、ほんの少しだけ肌寒さを覚えた。
ゆっくりと身体を起こす。
 
「あ、おはよ、凪」
 
近くから、声がした。
声のした方を見ると、俺が寝転がっていたベンチの少し空いたスペースに、あの時と同じような笑みを浮かべる稜が座っていた。
 
「……何でここに?」
「塩、切れてたから。散歩がてらに買って来たの。その帰りにここに寄ったら、凪が寝てたからさ。ついでに一緒に帰ろうかと思って、起きるの待ってた」
 
確かに、彼女の手にはスーパーのビニール袋が握られていた。
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