君が笑ってくれるなら
さてと帰るかぁ、なんて言いながら、彼女は立ち上がった。
俺は、ベンチに座り直す。
 
背伸びをする彼女の背中。
夕陽で紅く染まった横顔。
三年前の初恋を未だに引きずっている俺は、思わず黙って見入ってしまう。

あの時と変わらない栗色の髪。
髪型は、いつの間にかショートになっていたけれど。
幼かった顔立ちは、大人びてきていた。

益々彼女が好きになる。
それと同時に……遠くなる。
 
突然、彼女は振り返った。
 
「しっかし、アンタ、こんなところでよく何時間も寝てられるねー」
 
呆れながら笑う彼女。
 
一体何時間ここで、起きるのを待っていたのだろう。
 
こんな暑い中で。
ただの、彼氏の弟を。
俺のことなんか、放って置いて、彼氏のところへ戻れば良かったじゃないか。
どうして、俺のところにいる必要がある?

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