君が笑ってくれるなら
 
 
家までの道程。
熱を持ったアスファルトの上を歩く。
夕飯時なせいか、道路に人がいない。
 
「なぁ、平坂」
「稜でいいってば。何回言えば分かるの?」
 
無言が辛くなって話しかけただけなのに、返って来た言葉に棘があったので、軽く怒られた気持ちになった。
 
どうしても、名前で呼ぶのには抵抗があった。
恐らく、無意識の内に夕に遠慮しているのだろう。
 
「どうでもいいじゃんか。どっちだって」
「……名前で呼ばないと返事しないし、何言ったって答えないから」
 
明らかに不機嫌といった態度だった。

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