君が笑ってくれるなら
「夕?どうしたの?」
「あまりに帰りが遅いから心配でさ。凪も一緒だったんだな」
 
息も切れ切れに、夕は彼女に応えた。
 
「心配させてごめんね?公園に凪がいたから一緒に来たんだ」
「あぁ、そっか。母さんも心配してるから、早く帰ろう」
 
当然のように、夕は彼女の手を握った。

当然の「ように」ではない、「当然」の事だった。

俺は、ズボンのポケットに両手を無理矢理押し込めた。
暑くて汗ばんでも決して外に出さなかった。
 
ポケットの中に押し込めているのは、両手だけではなかったから。
押し込めていないと、さっき言おうとした言葉が、いつ溢れ出してしまうか分からなかった。
< 21 / 46 >

この作品をシェア

pagetop