君が笑ってくれるなら
お前、なんて顔してるんだよ?なんていいながら、俺に話しかけてくるんじゃないだろうか。
 
夕の頬に、そっと触れてみた。
本来なら、暖かいであろうその肌は、冷たくなっていた。
呼吸さえ感じなかった。
 
「起きろよ」
 
伏せられた瞼が今に開くことを期待した。
いや、願った。
 
「夕……」
 
名前を呼んでみた。
うっすら青白い唇は、動かなかった。
 
手を握ってみた。
握り返してくることはなかった。
 
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