君が笑ってくれるなら
稜の病室は、霊安室からかなり遠くにある。
病室には、親父と、稜の両親がいた。
 
入口からは、彼女の顔は見えない。
 
親父は、俺の顔を見ると静かに移動し、部屋を出て行った。
恐らく、夕のところへ行くのだろう。
 
 
病室に足を踏み入れ、まず、稜の両親に頭を下げた。
二人は、同時にそれに応えた。
 
ベッドに近付く。
包帯を巻かれた、彼女のほっそりとした手が見え、段々と上半身が見えて来る。
 
頭にも包帯が巻かれていた。
何針か縫ったらしい。
痛々しかった。
ご両親は、俺に気を使ってか、病室から出て行った。

俺は、彼女の隣に腰を下ろした。
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