君が笑ってくれるなら
彼女を、泣かせない方法はこれしかなかった。

彼女が笑ってくれるなら、例え自分の事を死んだ事にしたって構わなかった。


「そんなこと、できっこないわ!」
「そうだ、母さんの言う通りだ!」

母親が悲痛な叫びに似た声を上げ、親父もそれに同意した。
三つの目線が絡む。
どちらも今までに見たこともない、必死な顔だった。
だが、俺の決心は揺るがなかった。

「俺は、稜から笑顔を奪いたくないんだ。」

両親には、物凄く親不孝なことをしているのだろう。
頭を下げても、何をしても、償えないくらいのことをしているのだろう。
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