君が笑ってくれるなら
その刹那。
彼女は、夕の恋人だということが分かった。
そのことを自分の中で理解した瞬間、何かが自分の中で、止まった。
俺は素直じゃない。
いや、そのときの俺は、夕の彼女からの好意を、素直に受け止められる程大人ではなかった。
「……どーも。じゃ、俺、下に行くから」
自分でも分かる程の、ぶっきらぼうな態度。
ベッドの上に鞄を放り投げ、逃げるように部屋を出た。
階段を降りる足は、自然と早くなっていた。