内緒の保健室
―…放課後。
今日は、家まで送ってくれるという蓮斗には申し訳ないけど断って、数学準備室の前に来た。

あぁ…このまま逃げてしまいたい。
でもここで逃げたら…どんな目にあうかわからない。

ゴクリ…と唾をのんで、ゆっくりとドアに手をかけた。
―ガチャリ…。
キイィィィと音をたてながらドアが開き、あたしは中に入った。
「…あ、本当に来た」
ちょっと笑いをまじえてあたしの目の前にいる人物は目を細めた。
『なんの……用ですか』
篠沢享也は、またフッと目を細めると、その金色に光る髪の毛を触った。
「いーや?今日はテストだから」『………は?』
テスト………?
「今日は、ちゃんと君が来てくれるかのテスト♪」
そう言って篠沢享也はあたしを指さす。
『なっ……』
そのために人の事わざわざ数学準備室まで呼んだの!?
蓮斗にも断って!?
『ありえない…』
あたしが篠沢享也を睨みつけると、篠沢享也は軽く笑って言う。
「来週は……本当にだからさ」
『……え?』
「来週、またここに来てくれる?そしたら…」
『嫌です』
篠沢享也が言葉を言い終える前に、自然に口が動いた。
「へーえ?」
彼はまた、金色の髪の毛を面倒くさそうに触ると、ニヤリと口元をあげて、こう言った。
『…雲井蓮斗』
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