【短編】失った温もり
癒しの一杯
「お客さん、お客さん!」


呼び掛ける声にうっすらと目を開ける。


ああ、タクシーに乗ったんだっけ。


タクシーの外を見渡して、居場所を確認した。


「悪いね。ここでいいよ」


家まであと少し。
酔い醒ましに歩いて帰ろう。


タクシーから降りると、足元がふらつき壁に手を付いた。
心配そうにこちらを見ている運転手に、大丈夫だからと声を掛けて帰ってもらった。


角に消えるタクシーを見送って、そのまま地面に座り込む。

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