【短編】失った温もり
思考が停止した中で、足だけが犬の帰巣本能のように真っ直ぐ目的に向かっていく。


何も考えないのは楽でいい。
でも、楽しくはない。


考えるということは辛いこともあるけれど、生きているという実感が感じられる。


男には似合わない、可愛らしいキーホルダーをバックから取り出し、目の前のドアを開けた。


ゆっくりと閉まったドアに背を預け、その場に座り込む。


左腕に目を向け、時刻を確認した。
すでに、日付が変わってしまっていた。

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