【短編】失った温もり
“俺も後悔はしてないよ”


そんなのは嘘だった。


タクシーを拾うために大通りまで歩く。
その間、ずっと後悔していた。


左手の薬指を見つめる。
輝きを失ったリングが後悔を強めた。


訳も分からないまま妻に逃げられ、娘と二人きりになったあのとき、残りの人生は娘の為に生きようと誓ったはずなのに。


若くしなやかな彼女の身体は、俺の男を一夜にして現役に戻した。


“彼女が欲しいと”

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