刑事の秘め事【2】
「せーんぱーーい!!!」
丁度スクランブル交差点を通過した時、ご近所迷惑な呼び声が聞こえた。
「…チッ…朝っぱらからうるせーな」
何処のどいつだよ…。こんなスクランブル交差点のど真ん中で叫んでる騒音人間は。
「せんぱーい!!!」
第一、呼ばれた人間も可哀相だよな。こんなスクランブル交差点のど真ん中で恥ずかしくて顔も上げられねぇよ……。
「せんぱーい聞こえないんですかー!!!」
もう許してやれよ…。呼ばれた人間をこれ以上追い詰めるな阿呆。
「…お気の毒に…」
「何がお気の毒なんですか?」
何処の誰かも分からないが常識の無い馬鹿な後輩に呼ばれた当人を哀れんでいると、後ろから声をかけられた。
「いや…それは気のせいだった。よし!!頑張るぞ!!」
「枝真先輩…勝手に文書き換えるの止めて下さいよ。先輩を呼んだんですよ、先輩を」
まさかと後ろを振り返ると、巧橋 実典(コウハシ ミノリ)ことミノが満遍の笑みを浮かべてあたしの肩に手をおいていた。
「…嘘だ…まさか自分が被害者だったとは…」
「あぁスッキリした!」
恥ずかしさのあまり顔を上げられず俯いているあたしの横で、ミノは清々しい笑みを浮かべている。
「スッキリしたってお前…」
「先輩に恥をかかせるという新しいストレス解消法ですよ」
サラッと恐ろしい事を口走るミノの顔をじっと見つめる。