すきって言わせて
「歩(あゆむ)どいてよっ…」
「やだ。華帆すぐ逃げちゃうもん」
上から見下ろすと子供みたいな口調で言った
「もう…また呼び捨てにしてるし、恥ずかしいからどいてっ!」
いつもこんな口調でこんな態度
私は無理やり歩の肩を押して
体を起こそうとした
でもそれは簡単に歩の手に邪魔をされた
右肩に手を乗せて軽く押される
「もう、華帆はかわいいなぁ」
にっこり笑うと歩は私の耳元まで顔を近づけてきた
片手を私の顔の横に置いて
さらさらの茶色がかった髪を近づけてくる
「ひゃっ…」
吐息が耳にあたる
じたばたと動いてみてもどいてくれそうにない
「や、やめてってばぁ…」
「じゃあ、逃げてみれば?」
挑発的な言い方で攻めてくる
そんなの無理だよ…
歩のばかぁーー!
心の中で叫んでいたその時、
「おい、歩。もうその辺にしとけって」
低くて優しい声が私達のすぐ隣で聞こえてきた