キスが教えてくれたもの♪




あいつがバイクを止めたのは、母が勤める総合病院の駐車場だった。




――妹さんの、お見舞い?


わたしの鼓動がまた早くなった。


でも……

このドキドキは経験済みだ。


これは、病める相手を気遣う緊張感。



死は怖くはないけれど、痛みや不安をかかえる相手を前にすると、どうしたら良いか判らなくなる。

かける言葉が見つからない。


だって……

そんな時、わたしなら他人の言葉なんて欲しいと思わないもの。


一人でじっと、目を瞑っていたいと思うだろうから。
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