キスが教えてくれたもの♪



ある時、由紀がニヤニヤしながら俺に言った。



「お兄ちゃん、あの人のこと気になるんでしょ。

あたしは良いよ、ここで待ってるから。

一人でいるのは慣れてるからさ」


「そっか?」


俺は、その言葉に素直に甘えて走り出した。

って、病院の中は走ったりしたらいけねぇんだけど。

あいつが乗ったエレベータが、5階で止まって降りてくるのを確認して、直ぐに5階へ向かったんだ。


見舞い客を装って、何気ない振りして病室を覗いて回る。

その病室は案外直ぐに見つかった。



山野トメ



そう書かれた病室の中にあいつはいた。
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