キスが教えてくれたもの♪



「ねえ、お兄ちゃん、霧子さんに何か飲み物買ってきてあげて」



傍らに立つわたしを通り越し、小さな彼女が山之辺にそう言った。


――ほんとにこの子、十歳なの??


見た目の小ささに惑わされてはいけないと、その時のわたしは少し身構えた。


『十にもなれば、自分のことは自分できめんさい。

霧子には、それだけの意思と判断力が備わっているはずじゃ。

やろうと決めたら、方法を探すこと。

そうすれば、たいていのことはできるはずじゃ』


十歳のわたしに、祖母はそう言って、何でも自分で決めさせた。

良いか悪いかの判断も、何をしたいかしたくないかの判断も。

そして、それをどうやったら実現できるかのを探させた。


でもそれは……

その後ろには、いつだって温かい祖母の手が控えていると信じられたから。


状況は違えども、きっと彼女もそうだったのだろうと、なんだかそう思えたのだ。
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