キスが教えてくれたもの♪
わたしの思った通り、病室の外の廊下で、あいつはベンチに座って待っていた。
「由紀が楽しそうだったから、邪魔しちゃ悪いなって……」
そう言って、あいつは照れ笑いした。
妹思いの兄の役なんて、自分には似合わないって思ってるみたいに。
「わたし、また来るから」
「えっ?」
「由紀ちゃんと約束したから、また来るって」
「そっか、悪いな」
嬉しそうに笑ったあいつの顔が、なんだか無性に可愛く見えたのは何故かな?
あいつがそっと差し出した手を、自然と握っていた。
「行くか……」
そう言われて歩き出す。
行き先なんて分からないけど、こいつと一緒なら何処でもいいかな、なんて、わたしらしくもない。
山之辺正哉という奴を、もっと知りたいって思ったんだ。