キスが教えてくれたもの♪
止めてあったバイクから、予備のヘルメットを取り出すと、さっきと同じ要領であいつはわたしに器用にメットを被せた。
わたしはされるが儘に、その手に従う。
「よし、っと」
軽くメットに手を置くと、あいつはわたしをバイクの後ろへ乗せた。
「しっかり摑まっとけよ」
わたしが恐る恐る伸ばした腕を、ギュッと掴むと、あいつはわたしの身体をしっかりと引き寄せた。
何処へ行くのか、なんて野暮なことは聞かない。
わたしにも山之辺の本気が伝わってきた。
――何処でもいいや、こいつと一緒なら。
そんな気持ちになったのは、奇跡に近い、と思う。
唸るエンジン音に、煽られるように、わたしの気持ちはあいつに溶けた。
不思議な一体感。
何だか、何でもできそうな気がしたんだ。