キスが教えてくれたもの♪

止めてあったバイクから、予備のヘルメットを取り出すと、さっきと同じ要領であいつはわたしに器用にメットを被せた。

わたしはされるが儘に、その手に従う。


「よし、っと」


軽くメットに手を置くと、あいつはわたしをバイクの後ろへ乗せた。


「しっかり摑まっとけよ」


わたしが恐る恐る伸ばした腕を、ギュッと掴むと、あいつはわたしの身体をしっかりと引き寄せた。


何処へ行くのか、なんて野暮なことは聞かない。


わたしにも山之辺の本気が伝わってきた。


――何処でもいいや、こいつと一緒なら。


そんな気持ちになったのは、奇跡に近い、と思う。


唸るエンジン音に、煽られるように、わたしの気持ちはあいつに溶けた。


不思議な一体感。


何だか、何でもできそうな気がしたんだ。
< 133 / 237 >

この作品をシェア

pagetop