キスが教えてくれたもの♪


暫くは、飛んでゆく景色に目を奪われていたわたしだけど。

伝わるやつの温もりとバイブレーションに揺さぶられ、いつしか目を閉じていた。

瞼に当る光の強さとか、頬を撫でる風の温度、潮の香り……



――ここは海?



わたしの五感は、その微妙な変化を見逃さなかった。

スピードが緩められ、激しいバイブの代わりに、やつの温もりが強く感じられて……


「霧子、着いたぞ」


そう言って、やつがバイクを止めたのは、海に張り出た半島の先。

目を開けると、そこには沈み行く夕日が眩しく光っていた。



「綺麗……」

「間に合って良かった」



山之辺はわたしをバイクから降ろすと、手際よくメットを脱がせてくれた。



「窮屈だったろ?

気分、悪くないか?」



そんな、優しい言葉と共に、わたしの頭を自分に引き寄せた。
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