キスが教えてくれたもの♪



「らっしゃい!」



湯気立ち上る厨房に向かって、山之辺の声が響く。


「おじさん、ラーメンふたつ」


迷いなく注文する山之辺を呆れてみていた。

「わたしに選択権はないわけ?」

「お前に無い、ってか、この店に無い。

なぁ、おじさん、この店にラーメン以外のメニューってあるの?」

「失礼だなぁ、まぁ、僕のおススメはラーメンだけど、餃子も美味いよ」


急に改まったカウンター越しの店主が、頬を赤らめて答えた。


「じゃぁ、餃子追加、二人だからおまけしてよ」

「おう!」


くるりと向きを変えた彼は、黙々と作業に取り掛かった。
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