キスが教えてくれたもの♪



「ほい、餃子、お待ち」



カウンターに乗せられた餃子の皿を取りに、山之辺が腰を上げた。


「兄ちゃんの彼女さんかい? えらいベッピンさんだな」

「だろ?」

なんてやり取りを眺めながら、わたしは割り箸を持ち身構える。

「いっただきまぁ~す」

もう我慢の限界だ。この匂いもたまらない。

「うわぁ、ホント美味しい!」

「だろ?」

続いてラーメンも完食し、わたしは身も心も温かく満たされた。


「人間、寂しい時にはラーメンって相場が決まってんだ」

満足げにまどろむわたしを前に、山之辺が得意げに言った。

「何それ?」

「胸が閊えても、麺なら喉を通るし。食べると身体の芯から温まるし。涙出た分、スープで補えるし」

「確かに」

「だからここのラーメン屋は、夜中の二時まで開いてるんだよな?!」


やつの問いかけた相手はどうやらわたしではないらしい。


「まぁな」


そう答えたのはカウンターの向こうにいる店主だった。
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