キスが教えてくれたもの♪



「おじょうさんも、どなたか近しい人が入院なさってるんですか?」

カウンター越しにわたしに問いかける店主の声は、とっても優しくて、ラーメンのようにするりとわたしの中に入ってきた。

「えっ、は、はい、母が」

「そうですか、そりゃ心配ですね。

ここの病院は総合病院で大きなくせに、完全看護をうたってるせいか食堂がないでしょう」

「だからおっさんが店開けて待ってんだよね」

「い、いや、まぁ……、そういうことです」

顔を真っ赤にして狼狽える、店主を山之辺がからかった。

「おっさん、なんか、喋り方変じゃねぇ? 何緊張してんの?」

「うるせぇ!」

二人のやり取りを聞いていたら、思わず可笑しくて声が出てしまった。

「アハハハ……」

「おじょうさんまで、酷いなぁ……」

「あ、ごめんなさい。二人、仲がいいなぁって」
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