キスが教えてくれたもの♪
「つくづく、この場所にぁ、縁を感じているんでさぁ~
笑わねぇでくだせぇよ。
おじょうさんを見てたら、どことなく目元がうちの奴に似てたもんで、ちょっくら昔を思い出しちまいましてね……」
「へぇ~」と頷く山之辺に、店主がカウンターの下の引き出しから何やらゴソゴソと物を出して見せていた。
「ほんとだ、ちょっと似てる」
その声に釣られて覗き見ると、そこには小さな額に入った男女二人の写真があった。
店主の隣で優しく微笑む女性が彼の奥さんだろう。
成程似てるというか、わたしにというよりわたしの母にそっくりだった。
確かに縁かもしれない。
わたしが山之辺に出会ったのも。
母がこの病院に勤めていたのも。
由紀ちゃんがこの病院に入院しているのも。
そして、わたしが今、この店で山之辺と一緒にラーメンを食べているのも。
きっと山之辺もわたしと同じことを考えていたのかな。
わたし達は目を合わせると、どちらからともなく笑い合った。