キスが教えてくれたもの♪
ある意味、拷問に近い仕打ちとは承知の上で、山之辺に頼んだのだ。
「一人で家にいるのが怖いから、一緒にいて」って。
「わかった」
山之辺はそう頷くと、わたしに付かず離れず寄り添ってくれた。
自分はソファーで寝ると言って、わたしが寝るまでベッドの横で手を握って話をしてくれた。
亡くなった母親のこと、妹のこと、そして父親のこと。
家族との思い出や、幼いころの自分の話。
「俺さ、病気の後、由紀が歩けなくなったのが信じられなかった。
なんで歩けないのかって、両親に詰め寄った。
挙句、無理やり由紀を歩かせようとしたりしてさ。
そりゃ、まだ子供だったってのもあるけどさ、由紀には酷いことしたなって思ってる。
思うようにならない自分の身体に、一番苛立ちと不安を抱えていたのはあいつなのにな。
今だって半人前の俺だけど、あいつの望むことはできるだけ叶えてやりたい。
そう思うだけで、何にもできないけどな」
家族を想う、やつの優しい気持ちに触れることができた。