キスが教えてくれたもの♪
そんなわたしの日常に、ある時大きな影が立ちはだかった。
それは定期テスト後の個人面談で、珍しくわたしの横に山之辺がいない一瞬の出来事だった。
「山野さん、だったかしら? ちょっと顔かして」
――って、どんな日本語だ?
「顔はかせません」
わたしは宿題ノートから、顔も上げずにあっさり答えた。
だいたい……、初対面に近い相手にこんな不躾な物言いはないだろう。
わたしは無視、を決め込んで机から顔も上げずに宿題に取り組んでいた。
「ふざけてんのっ!!!」
あまりの大声に仕方なく顔を上げると、眉間に皺寄せたお怒りモードのギャルが三人、わたしの机の前に立ちはだかっていたのだ。
「何か御用ですか?」
「用があるから呼んでるんでしょっ!」
「わたしの顔に??」
「な、なにこいつ……」
三人は顔を見合わせて唇を震わせ、何かを囁きあっていた。