キスが教えてくれたもの♪
彼女らは目星をつけていたであろう空き教室にわたしを連れ込むと、用心深く周りを伺いドアを閉めた。
掴まれていた両腕を振りほどかれ、少しよろけたわたしをあざ笑うように、彼女達は開口一番叫んだ。
「あんた、どういつもり?!」
――って、何がでしょう?
わたしには全く自覚がないので皆目検討がつかない。
脅しているつもりだろうが、その怒りはわたしにとって滑稽でしかない。
寧ろわたしの興味は、大きく動く朱塗られた口元と、見開かれた付け睫毛の揺れる目元に集中していた。
うわぁ~、その化粧で学校来る? とか。
その付け睫毛って、夜寝る時は外すのかな? とか。
「こたえなさいよっ!!」
「何について何を答えるのでしょう?」
「ま、正哉のことに決まってるでしょ!!!」
あぁ、とその時やっと気がついた。
彼女らは以前見かけた山之辺の取り巻きなんだ、と。