キスが教えてくれたもの♪

もう一度、問いを繰り返す。

「山之辺についての何を答えろっていうの?」

興奮した彼女らには、思考能力が欠如している。

「だいたいあなた理系クラスでしょっ! なんで正哉に近づいてんのよっ!」

「うちのクラスにやって来るのは山之辺の方ですけど」

「そ、そういうことじゃなくてっ!

なに? まさかあなた、正哉の彼女とか言うんじゃないでしょうねっ!!」

「彼女?」

「つ、つきあってるとか……、そういうことよっ!」

――って、わたしの場合当てはまる?

彼女たる条件とやらをきちんと並べてくれたなら、わたしにも答える術があるというものなのだけど。

「う~ん、確かに毎日一緒にいるし、家族ぐるみの付き合いはしてるけど」

どうやら彼女達は、山之辺とわたしを付き合っているカレカノの関係と認識したらしい。

「別れてっ! あたし達に正哉を返してっ!!」

凄い剣幕で詰め寄ってくる三人の睫毛ギャル。

感情を昂ぶらせ、涙目になりながら訴える彼女達を目の前に、わたしは途方に暮れていた。

――って、言われてもねぇ~

個人の主張は権利だし、受け止めるだけなら出来るけど。

その要求を個人的には受けられない。

相手があることだからね。

そもそも、そういう主張はもう一人の当時者、山之辺を目の前にするのが筋なんじゃないだろうか?
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