キスが教えてくれたもの♪
「だからって……」
反論を試みるも、いつになく雄弁な山之辺に返す言葉が見つからない。
「人間は有史以来、男と女が交わって生を紡いできたんだ。
別にお前一人が特別って訳じゃない。
俺はお前が好き。
お前も俺が好き。
寧ろ自然な成り行きだろ。
って、霧子、まさか心変わりしたってんじゃないだろうな?!」
詰め寄るような眼力に負け、つい大きく頷いた。
「それはない」
――って、あり得ないでしょ! これだけ毎日一緒にいて。
「じゃ、霧子も依存はないな?」
「……」
こういう時、山之辺は強引だ。
「咲、そういうことで俺達はふける。あと宜しく」
片手を軽く挙げ、咲に向かってそう宣言した山之辺。
「えっ、山之辺、マジ? 即行過ぎない?」
やつのあまりの行動の早さに、煽った咲さえ動揺を隠せない。
「だって、夜は由紀もいるし、結構俺達二人っきりの時間ってねぇんだぜ」
確かに。
わたし達は毎日一緒にいるとはいえ、それは理由があってのことなのだ。