キスが教えてくれたもの♪

肌の触れ合う感覚が、身体中に電流を走らせた。

これが愛の儀式?

それにしては、あまりにも……


「い、いたぁ~」


世紀のその瞬間、その快感は痛みへと変わった。


「我慢しろ、誰もが超える壁なんだ。お前なら出来る」


冷徹無比な言葉を投げかけ、額に汗した山之辺がわたしの身体を抱え込んだ。


――誰もが超える壁、ってホントかなぁ~


必死に痛みに耐えながら、思い浮かんだのは祖母の言葉。

『霧子、人を疑うより信じる方が難しい。けどなぁ、信じると楽になるさ。信じれば、その人と一緒に幸せになれるからね』

それは全身全霊の信頼を寄せるということ。


「正哉……」


やつを信じるって思った瞬間、身体の力が抜けた。


「霧子……」


わたしを抱え込んでいたやつの腕の力が抜け、唇が重ねられた。

愛してる、と囁く甘い声。

幸福の予感に浸るまもなく、山之辺は更なる先へ進んでいく。


「ま、待って、もっとゆっくり……」


ひとつになれた喜びよりも、焦りが先に立つ。

山之辺の愛は留まるところを知らない。
< 198 / 237 >

この作品をシェア

pagetop