キスが教えてくれたもの♪
「や、山之辺……、
ある意味お前は興奮のあまり周りが見えてないのかもしれないけど、霧子、怒ってない?」
わたしの怒りに震える様子を見かねて、咲が恐る恐る山之辺を制した。
――そりゃ怒るでしょっ!
ある意味ショック状態だったわたしに、やっと思考能力が戻ってきた。
山之辺に言わせっぱなしでは、どうにもこうにも収まらない。
「好き嫌いと結婚は別ものでしょっ!
だいたい、結婚なんて初耳だよ。
いったいあんたがどうやってその妄想を築き上げたのか知らないけど、わたしにだって都合があるし。
おまけに早く子供を産めだなんて、セクハラじゃない?!」
一気に捲し立てたけど、まだまだ言い足りない。
「じゃ、お前はいつまで待てるんだよ。
高校卒業して、大学入って就職して、仕事にのめり込んで結婚なんて後回しにするに決まってる」
「それの何が悪いの? 結婚だけが女の幸せじゃないでしょ!」
「俺は早く家族を作りたいんだっ!」
「勝手に作ればいいじゃない!」
「俺はお前と作りたいんだっ!」
「それが妄想だって言ってんの!」
正面きって睨み合ったわたし達は、お互い引くに引けない状況に陥っていた。