キスが教えてくれたもの♪
「それが保守的だって言ってんの。
戦前戦中世代のじいさんやばあさんが長生きなのはわかるけど。
おやじやおふくろの世代はもう過労死とか突然死とか、明日の生き死にさえ自分の意思でコントロールできない不遇の時代だ。
まして俺達の世代は、いかに生き残るかを考えるほど生きにくい世の中になっちまってる。
平均寿命だって後退するかもしんねぇ。
だからこそ、生き急いで何が悪いんだって話。
おふくろが死んで、確かに切羽詰ったってのもあるけど、それ以上に俺が感じたのは家族の絆なんだ。
おふくろが必死に守ってきたこの家族を、俺も守っていきたいなってさ。
おやじだって、家族を守る為に必死になって働いてる。
でもそれは絆があるからなんだって。
どんなに疲れて遅く帰ってきたって、由紀の寝顔を見ればホッとするって。
親ってそんなもんなのかなぁ、ってさ。
だから俺も早くそんな家族を作りたい。
それが早いか遅いかなんて関係ない。
今そうしたいからそうする。
お前と早く家族を作りたい。
お前が子供が生を産んで、絆が増えて、俺は家族を守る為に生きていく。
それが俺の描く幸せだ」
「正哉……」
「あながち、お前の描く幸せとブレちゃねぇだろ?」
そう言って笑う山之辺に迷いはないらしい。