キスが教えてくれたもの♪
駅から山之辺家までは車で十分ほどの距離。
住宅街を抜けて歩いても十分くらいのものなのだけれど、途中、坂や段差が結構あって車椅子ではきついのだ。
「ケンタ、まだ温かいね。良い匂い」
わたしの膝の上から立ち上る、スパイシーなフライドチキンの香りにお腹の虫がグーと鳴いた。
「ごめんなさい。わたしが我侭言ってついてきたから夕飯遅くなっちゃったね。
でも……、
毎年ママと来てたから、やっぱりどうしても見たかったの」
「そういうのは我侭って言わないんだよ」
わたしはそっと由紀ちゃんの肩を抱きしめた。
「綺麗だったね」
「うん」
「また来年も絶対見に来よう!」
わたしはちょっぴり由紀ちゃんを抱いた手に力を込めた。