キスが教えてくれたもの♪


「霧子さん、あのね、霧子さんにだけ、あたしの願い事教えてあげる」


由紀ちゃんが小さな身体をそっとわたしに近づけて囁いた。

「あのね、霧子さんが本当のお姉さんになりますように、ってお願いしたの」

へへ……、と言ったあと、由紀ちゃんは少し頬を赤らめた。

「お兄ちゃんと霧子さんが結婚したら、霧子さんはわたしのお姉さんになるんでしょ?」

「まぁ……、すればだけど……」

その問いにどうにも即答は出来なくて、わたしは曖昧な返事で逃げた。

でも、由紀ちゃんは更に上手だった。

「ふつつかな兄ですが、どうかもらってやってください。

わたしはできるだけ、我侭言わない良い子にしますから」

恐らくきっと守られるであろう誓いに胸が痛くなる。

「由紀ちゃん……」

山之辺に一方的に言われることには反発を覚えるわたしだけど、由紀ちゃんの願いには答えてあげたい、なんて思ってしまう。
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