キスが教えてくれたもの♪

「お兄ちゃん、霧子さんにプレゼントは?」

「俺はあとでゆっくりあげるの」

「えぇ~、あたしも見たいなぁ」

「駄目駄目、ここは譲れない」

「残念」

「さぁ、ケーキ頂きましょう!」

木を形どられたそのケーキは、ナイフを入れるのが憚られるほど、とっても精巧に作られていたのだけれど。

味はまったりとした美味しいチョコレートケーキで、ママとおじ様の分を残し、あっさりとみんなのお腹に納まってしまった。


「ふわぁ~」と、由紀ちゃんが大げさに大きく伸びをした。

「あぁ、今日ははしゃぎ過ぎで疲れちゃった。そろそろ寝ようかなぁ」

きっとこれは彼女なりの気遣いなのだ。

「霧子さん、今日はとっても楽しかったです。

良い子は早く寝ないとサンタさんのプレゼント貰い損ねちゃうから、おやすみなさい」

あとでプレゼント見せてね、由紀ちゃんはそう付け足して、早々に自室に引き上げていってしまった。

「おばさんも、もう帰る時間だろ? 俺達も行くか」

切り分けた一人分のケーキをタッパーに詰め、フライドチキンパックと一緒に手提げに入れた。

「おじ様の分はテープルの上に置いておくね」

「あぁ、親父が帰ったら由紀も起きてくるさ」

わたし達は居間の電気をつけたまま山之辺家を出た。
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