キスが教えてくれたもの♪

「あぁ、さっきの山之辺の件か。

気にするな、お前が悪いんじゃない。

お前はクラスが違うから知らんだろうが、先々週あいつの母親が亡くなってな。

急な交通事故だったらしい。

今日みたいに至急の呼び出しがかかって……

そういや、お前も先々週確か……」


「ええ、わたしは祖母が亡くなって……」


そう上の空で応えながら、わたしはあの墓所でのやつの様子を思い出していた。


――あの時、あいつは母親の葬儀で墓所にいたんだ。


身体が小さく震えた。


「じゃあ、なお更知らんだろう。

お前も先々週はずっと休んでたからなぁ」


「わたし、謝ってきます。

きっと、思い出させちゃいましたよね。

知らなかったとは言え、悪いことしちゃったなぁって……」


いつになくうろたえるたわたしの様子を見て、先生はなだめるようにこう言った。


「だろうとは思うが、止めとけ。

お前が謝ることじゃない。

こういう事は、そっとしておくのが一番なんだ……」

< 33 / 237 >

この作品をシェア

pagetop