キスが教えてくれたもの♪
「で、こちらは?」
母の目が、一段高いあいつに注がれた。
「あ、こいつは、山之辺正哉」
すかさず横から咲がしゃしゃり出たけど……
「ご本人にお聞きしたいわ」
母にはサラリとかわされた。
「俺、山之辺です。
霧子さんやこいつとはクラスが違うけど、同学年です。
今日は朝早くからお邪魔してすいません。
さっき、コンビニでこいつに会って、無理やり連れてこられたもんで」
あいつは、真っ直ぐと母を見据えてそう応えた。
ライダーパンツに袖なしランニングなんていう、ワイルドな出で立ちとは似ても似つかぬ落ち着いた物言いで。
母の緊張が一気に解けた、気がした。