キスが教えてくれたもの♪
「あ、ごめん、咲、お皿、下げるだけ流しに下げておいて貰えるかな?」
「オッケー、それくらいならあたしにも出来るよ」
わたしは、急ぎ、風呂場に向かう母の背中を追いかけた。
「お母さん」
「あら、霧子、お友達を放っておいちゃ駄目じゃない」
母はわたしを見るなりそう言った。
「あ、うん、お母さん、今日は突然ゴメンね。
昨日急に遊びに来るって、咲が言い出して。
お母さん、夜勤明けで疲れてるって思ったんだけど」
「いいのよ、霧子。
ここは、あなたの家でもあるんだから。
それに、賑やかな方が、あなたも気が紛れるでしょ」
「うん、ありがとう」
楽しそうなお友達じゃない、良かったわね、と母は優しくそう言った。
母は相当疲れている。
もう行きなさい、と力なく浴室のドアの外へわたしを追い出した。