キスが教えてくれたもの♪



祖母は確かに、わたしの心の支えだった。

わたしが、唯一心を許せる人だった。



母は……

強い人だけれど、見かけよりはずっと弱い。

だから、その弱みを見せまいと虚勢を張るところがあった。

父が死んだ時も、涙一つ見せず、残された家族の生活を支えることに全力を注いだ。


それは、祖父を亡くした祖母の姿と重なったけど。

一つだけ大きく違ったのは、

母には、子供のわたしが第一ではなかったということかな……


恐らく、愛する夫を亡くした悲しみを表に出すことをはばかるあまり、家族に対する愛情さえも封印してしまったのかもしれない。

子供心にも、母のそんな心の内を察していた。


『霧子、お母さんを恨んじゃいけないよ。

道子さんは、道子さんなりに苦しんでいるんだ。

なぁに、いつかその悲しみを乗り越える時が来る。

親子の絆は、霧子がしっかり握っていればいいさ』



それだって……

祖母が傍にいてくれたから耐えられた。
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