キスが教えてくれたもの♪
咲に呼ばれて気を許したのか、あいつがこっちへ歩いて来た。
周りの女子達がにわかに騒ぎ出す。
「あれって、三組の山之辺君でしょ……」
「若宮さんと山野さんって……」
「やだ……似合わない……」
「なんだよ山之辺、何の用だよ?」
咲の大きな声に、周りの囁きがかき消された。
「お前に用はない。
俺が用があるのは霧子」
そう言ったあいつは、わたしの方へ身体を傾けると耳元で囁くようにこう言った。
『今日の放課後、家に迎えにいくからさ』
そのまま、何事もなかったように歩き去る。
わたしは呆然とその後姿を見送った。
「ねえねえ、霧子、山之辺、何だって?」
「えっ? さあ、今日迎えに来るって」
「霧子も鈍いなぁ~
それって、デートのお誘いじゃん。
いいないいな、正直羨ましい。
絶対、あした詳しく教えてよ、デートの内容。
すっごい興味ある。
あの山之辺が、霧子を何処へ誘うのか、さ」
咲は笑ってそう言った。