キスが教えてくれたもの♪
「霧子、早く乗れよ」
「あ……、うん」
あくまでわたしは放心状態のまま、力なく頷き、あいつの指示に従うだけ。
バイクの後ろは、以外に広くて、捕まるところのない心許なさに、わたしはあの日の咲を思い出す。
――って、こいつに捕まる?!
そう言えば、咲は山之辺の背中にしっかりと捕まって、わたしに手を振っていたっけ……
わたしは恐る恐る、あいつの背中に手を伸ばした。
その手があいつに触れたか触れないか、の正にその瞬間、わたしの腕はあいつにしっかりと摑まれた。
「ほら、ここでこうしっかりと手を組んで……
絶対放すんじゃねぇぞ」
わたしの指を一つ一つ絡ませて、あいつはその手を上から優しく包み込んだ。
わたしの身体はあいつに、これでもかっ! ってくらいに密着する。
――これが普通なの?
息も出来ないくらいに苦しくなった。