【完】ラブ☆パワー全開
「綾乃ちゃーん?」
山北さんの声が聞こえてハッとした瞬間、
考え過ぎていたあたしは足元の段差なんて全然見てなかった。
おもっきり躓き……倒れる!
はずなのに……痛くない体。
「危なかったねぇ……」
山北さんに抱えられていた。
「あっ! すみませんっ」
慌てて謝ると、
苦笑いを零した山北さんが
「ちょっと意地悪言い過ぎてごめんね」
と、あたしの腕に手をかけ、
体勢を立て直してくれた時、
千恵があたしのところに来て耳元でそっと囁いた。
「ね? あれ、仁じゃない?」
千恵が小さく指差す方向。
ベンチに座ってこっちを見てる仁、発見っ!
「うわっ、本当だ! ごめん、千恵帰るっ」
「ほいほい、この埋め合わせは今度ね」
不敵な笑みの千恵にゾッとしながらも走り出した。