【完】ラブ☆パワー全開
「綾乃ちゃーん♪」
あたしのデスクの隣の椅子に勝手に座り、
にっこりとした笑顔を向ける山北さん。
いや、今。
勤務時間ですけど。
何も言わず、そんな目で見つめると
「今日飲みに行かない?」
だから仕事中だってば。
「山北さん……仕事に戻って下さい」
デスクで、パソコンにデータを入力しながら冷たい口調で言う。
てか、社長でも上司でもないあたしが何で言わなきゃ駄目なのよ。
「う~ん。綾乃ちゃんがオッケーくれたら、すぐにでも戻るよ?」
「はぁー……山北さんと飲みに行く理由はないと思います」
そう言って、
山北さんへと視線を向けるとにっこりと笑い、1枚の紙を手渡された。
受け取ったのは、新入社員歓迎会の用紙。
……。
「ってことで19時にロビー集合ね」
新入社員歓迎会の打ち合わせなら、初めからそう言えってーの!
キッと睨むあたしを見てクスクスと笑い、
勝手に座っていた椅子を戻すと、そのまま去って行ってしまった。
颯爽と消える姿が、
何でこんなに重い気分にさせるかな。