【完】ラブ☆パワー全開
俯いたまま、
仁の隣を通り過ぎた。
その瞬間までも、
仁があたしの腕を引き止めてくれるんじゃないかって……
甘いことを考えてしまった自分自身に笑えて、笑えて、涙が出る。
だって、聞こえてきたのは遠のく足音、
その音だけを耳が拾い、
エコーがかかったように響く。
足音が消え、
あたしはその場に立ち止まった。
目にいっぱいに溜まった涙で視界が歪む。
そして、ゆっくりと振り返ると、
当たり前に仁の姿はなく。
その現実に、
あたしの目からは溜まった涙の粒が零れ出してしまった。
こんなことになるなんて思ってもみなかった。
あたしは仁が好きで。
大好きで。
ずっと、そばに居て欲しい。
それ以外、何の願いもなかった。
それなのに、
こんなにも想っていたのに。
あたしの願いは、
簡単に崩れ去った。