【完】ラブ☆パワー全開
ロビーのドアを出た瞬間、
「綾っ」
と呼ばれた声に、
あたしの脳内はピンク色に染まった。
だって、この声は仁!
今まで迎えには来てくれてたけど、
あたしが電話をしたら会う。そんな感じで離れて待ってたから。
それに名前を呼ばれたのなんて初めてで。
しかも聞き逃してない。
呼び捨てだったよね!?
「仁♪」
嬉しくて嬉しくて、
顔がニヤケたまま駆け寄った。
なのに、
見上げた仁と目が合わない。
いつもの優しい笑顔がなぁーい!!!
仁の目線の先は……山北さん。
そして、近寄って来る山北さんを見て仁の前に立った。
「綾乃ちゃん?
彼氏の前に立って睨んで……威嚇しないでよ、ね?」
仁の前に仁王立ちし、
山北さんを睨んで威嚇していたあたしに苦笑いをみせる。
だって、また仁に何かするのかな?
って思ってさ。
「ごめんね?」
あたしからゆっくりと視線を仁に向けた山北さんが笑顔で謝る。
あ、本当に仁に謝った。
「何が……ですか?」
仁が標準語。
見上げた仁は、
首を傾げながら山北さんを見てる。
「ん? 色々と……かな?」
は? 何その意味深な言い方?
今度は、あたしが山北さんに首を傾げる。