【完】ラブ☆パワー全開
あっ! 出た!
「綾さん!? どうかしたん? 電話でぇへんから心配したやん」
何の反応もない。
「綾さん!? 聞こえてるー?」
大きな声を出してみるのに、
何にも聞こえてこない。
「綾さ……」
《む……り》
「へ? 綾さん!? ちょっ……」
そこで切れた電話。
何かあったんか!?
もう一回かけても繋がれへんし。
中へと戻り、
早番で帰る準備をしてた楠木の首を掴んだ。
「った! は? 何?」
「一生の頼み! バイト変わってくれ!」
俺の手を振り払い、
驚いた顔を見せた。
「はぁ? 朝6時から頑張ってたんですけど?」
「だから一生の頼みって言ってるやん」
「……頼んでるわりに偉そうじゃない?」
少し冷たい目で俺を見ながら呟くから……。
仕方なく手を合わせて
『頼む! 違う日バイト変わるからっ』
ってお願いし直した。
ニヤッと笑った楠木は、
「OK。また決まったら言う」
って意味深な答え。
でも、今の俺には気にしてる時間なんてない。
ダッシュで、
ロッカーにエプロンをほり投げ着替えて外に出た。