【完】ラブ☆パワー全開
鍵を開け玄関に入り、
ミュールのバックルを外すのに戸惑ってしまった。
だって、後に仁が居るから。
何だか、それだけで恥ずかしくなってきちゃってさ。
「ごめんね、ちょっと待ってね?」
ようやく、ミュールを脱ぎ、
電気のスィッチに手を伸ばした瞬間、
後から抱きしめられた。
見開いた目と、固まってしまった体。
薄暗い部屋。
息が聞こえるくらいに静かで。
心臓の音が自分の耳にも響くくらい。
「じっ、仁?」
やっと出た言葉は、
仁の名前を呼ぶのが精一杯。
「あ、え、ごめん! 俺、急に何して……え?」
あたしの声を聞き、回してた手を離そうとしたから
思わず両手でその手を握り返してしまった。
「あたし、あたしもね」
「綾さん?」
恥ずかしい。
仁に、こうして欲しかった……
なんて言うのが恥ずかしい。
だけど嬉しかったから。
ギュッて抱きしめて欲しいって思ってたから。
仁が抱きしめてくれて。
凄く嬉しかったんだよ?