【完】ラブ☆パワー全開
「遅いっ!」
「え?」
外に出ると、両手で両腕を擦りながら手すりに座って居た楠木が居た。
「礼子、着替えるのに何十分かかってんだよ!?」
そう言いながら、ヒョイと飛び降りて私の前に立った。
見上げた私は、首を傾げて
「楠木は何してんの?」
と尋ねたんだ。
だって、そうでしょ?
楠木は、何でも早いタイプでバイトが終わればいつも1番に帰る。
それなのに、こんなところで。
こんなセリフ。
おかしくない?
「ご機嫌ナナメの礼子様をお送りしようかと思ってね」
「はぁ? てか、何よ。ご機嫌ナナメって!?」
「ご機嫌ナナメじゃん。綾乃さん来た日はさ」
「……」
「それに、こんな日は着替えて出て来るのも遅いし。他の女の子達と一緒に帰らなきゃいくら礼子でも危ないだろー」
「……何よ、それ」
口を尖らして俯いた私を見て、楠木が上から笑う。
何よ。何よ。何よ。
楠木のくせに!
男らしいことしてんじゃないわよ。
いつから気づいてたのよ、
綾乃さんが来た日は帰りが遅いって。